白隠禅師の瞑想について -記念企画-

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平成27年5月31日、六本木アカデミーヒルズにて開催された記念企画。その中の一つ、【白隠禅師の瞑想について】に関してのご報告です。


【白隠禅師の瞑想について】は、16時~16時40分と17時~17時40分の2回入れ替え制で、各回50名にて開催されました。講師は、福聚寺住職・芥川賞作家の玄侑宗久師が務められました。

150531m-1.jpgまずは講師によるお話から・・・。

脳が睡眠時に、エネルギーの3割を消費している時も含め、常に考えていること、意識を使って考えることが祈りになること、考えないことをやってみるのが瞑想の一つであること、瞑想の種類にシャマタ(止)とヴィパッサナー(観)の二つがあり、時間と難易度の観点からヴィパッサナーを行なうことなどが説明されました。

瞑想を体験する前に、"意識"というものを知る為に、視覚によってどれだけ意識が変わるかを実験しました。まず、人差し指を前に出し、右目と左目で同時に、焦点を合わさずぼんやりと見据えた後、黄色い四角が書いてある紙を先程と同様に見ます。すると、何が見えてくるのか・・・。
見える方、見えない方おられましたが、目的としましては、焦点をあわさずに、でもその対象を意識して見る事によって、思考は停止(考えごとなどはしない)するが、意識は集中しているという感覚を実体験する事でした。

150531m-3.jpgまた、師は臨済録の

心法無形、通貫十方。在眼曰見、在耳曰聞。在鼻齅香、在口談論、在手執捉、在足運奔。本是一精明、分爲六和合。

心法(しんぽう)形無(な)うして、十方(じつぽう)に通貫す。眼に在(あ)っては見と曰(い)ひ、耳に在っては聞と曰ふ。鼻に在っては香を嗅ぎ、口に在っては談論し、手に在っては執捉(しゆうそく)し、足に在っては運奔(うんぽん)す。本(もと)是(こ)れ一精明(いちしようみよう)、分かれて六和合(ろくわごう)と為(な)る。

を引用し、見たり聞いたりすることに心があることが大事であると述べられました。

その後、いよいよ白隠禅師内観の秘法の実践に移りました。
講師の考えでは、坐禅をしながらよりも、立ち上がり、かかとを交互に上げる疑似歩行をしながら行なう方が意識しやすいとし、目を閉じ疑似歩行しながら下半身に意識を集中し、白隠禅師の内観法の現代語訳を師が読み上げるという方法で瞑想を行ないました。

150531m-2.jpgこの方法と似たもので「考える葦瞑想」というものも行ないました。
これは自分が葦になり風にゆられるという瞑想でした。参加者の様子を拝見しておりますと、明らかに男性より女性の方が熱心に体をゆらし瞑想に集中しているように感じました。
体の働きは"今を生きている"のに対して、意識はどこかにいっているので、その意識を一点に集中させること、また「意識をむければそこに気血が集まる」という漢方医学の考え方から、臓器を含む全身を調えるための瞑想であると述べられました。

次に白隠禅師軟酥(なんそ)の法について説明されました。この瞑想の注意点として、祈りをあげられ「頭の上の卵大のバターが下の方に溶けてきて気持ちいいと思うことが大事。般若心経のソワカは成就したということ。自分で願いが叶ったとか、気持ちよくなったと思ってしまうことが大切」と述べられました。

そして、結論として観音観(アヴァローキタ)とは、"away look"であること、つまり離れて見ることであると述べられ、経典の暗誦やスケートの回転などを例に挙げ、「現代は少し考えすぎている。もっと脳を上手に使い身心を一つにし、自分の良い状態を意識してみること、そうしながらよい人生を歩んで下さい」と結ばれました。

短い時間で盛りだくさんの内容だったかと思います。既に坐禅や瞑想をご自身で行なっている方も多くお見えでしたので、さらにこの講座によってコツをつかみ、ご自身の坐禅や瞑想を深めていっていただければと思いました。
 
ご参加いただきました皆様、誠にありがとうございました。